─── 日曜日は乙でした。最近では珍しかったんじゃない?予選見ずに日曜に鈴鹿入りって。
うん、実は、社命で、とある資格を取得する必要があってね。その試験日が土曜日だったんだ。まぁ厳命されてたって訳でもないんで、取得しないっていう選択肢もあって、試験日がGTと重なってるのに気づいて、一時は本気で取得を断ろうかとも思ったんだけど、今後も今の会社で今の仕事をやっていくとしたら、取っとくに越したことはないと思って、泣く泣く予選は諦めた。
─── へぇ。その割には、日曜は朝のフォーミュラ・エンジョイのスタート前には既にコースサイドにいたよね?
高速バスで、土曜の夜に広島を出たからね。寝ている間に移動できるんだから効率的だし、費用も新幹線より安いし、あれはあれでいいね。
ただ、その試験のために曲がりなりにも事前には試験勉強しないといけなくて、各カテゴリーの今年の展望とかをblogに上げようと思ったけど、時間がなかったーよ。
─── ・・・と、B米(*1)に突っ込まれる前に自己弁護をしております。
や、やかましいわっ!
─── ところで、今回のレースをどう見たの?鈴木タソ(*2)のサイトで暴露された新しい特別性能調整ルールのために、GT500クラスは開幕からの2戦は三味線の合奏になる、っていう話もあったけど。
うん、それなんだけどね。どうも鈴木タソの記載内容だけでは、ルールの大枠すら掴めないんだよね。とにかく開幕から2戦で速かったクルマには、その車種を使う全チームに対してウェイトを載せるんだよ、ってことでいいんだよね?
鈴木タソは「詳しくは発表されたブルテンを見てもらいたい」なんて書いているけど、あの人は自分のサイトの読者層をどんな人達だと考えているんだろうね。一般ファンはGTAのブルテンなんて見ようと思っても簡単に見られないんだよね。
─── あ、それね、みんな大好きミノルタソ(*3)がご丁寧にも童夢のサイトの中で要約してるよ。
どれどれ・・・なるほどね。
─── なるほど・・・って、わかったの?
いや、この文章そのものも「要約」だから正確にはわかんねぇけどさ、でも言いたいことはわかるでしょ。突出して速い(そして強い)車を縛るためのルールだってことは確かなんだし。
それより、なんでこんなルールができたんだと思うよ?
─── え?だからそれは、速いクルマを・・・
うん、でもそれなら技術規定なり競技規定なりを変えれば適用できるじゃん。問題なのは、それらで対応せずに、こんな複雑怪奇なルールを、なんでわざわざ個別に設けたのか、ってこと。
おととしに特別性能調整が実施されたとき(*4)は、一般ファンだけでなくエントラントサイドからも反発が強くて、しまいにゃシーズン終盤のGTAの加持さんのインタビュー記事で、加持加治さん自身も「あれは悪法だった」と認める発言をしちゃってたよね。
─── そういえばそうだよね。ミノルタソも書いてる。
おととしの特別性能調整は、確かにわかりづらかったんだけどね。でも、単純に車種別でハンディを設定するだけだと、ワークス格と準ワークス格の格差を埋めることができないってところも含めて、その志については評価してたんだよ。ただ、さすがに参加チームも仕事でやってるだけあって、これだけ複雑な性能調整規定ですら利用して三味線弾くことでシーズンを有利に展開させようとした結果、レースがわかりづらくなったのはいただけなかったね。
─── で、なんでそれを今になってまた復活させたのかってこと?
うん、まぁ調整の要件や調整の内容は違うにしろ、またこんなのを引っ張り出さざるを得なくなった理由はなんだと思う?
─── うーん・・・やっぱ速すぎるNSX対策?ホンダ縛りというか・・・?
いやぁ、違うと思うよ。そう思っていた人たちは多いみたいだけど。というか、GT-Rにチャンピオンを獲らせるために導入されたんじゃねーの?とか考える人もいたけど、考えてみてよ。NSXは今年は既に縛りを受けてるんだよ。開幕前に車重が+50kg。
─── あ、そうか。でも、それだけじゃ足らないってことじゃないの?鈴木タソがあれだけぼろくそに書いてるってことは、少なくともNSX陣営にとっては、自分達を狙い撃ちにする規則だ、って考えてるのかと思ってた。
お前までンダヲタみたいなこと言うんじゃねーよ。
てか鈴木タソは去年の開幕前にも「06年モデルのZに対してスキッドプレート装着免除の特認措置が降りた。これで06年モデルのZは一躍優勝候補になった」とか書いて、大恥かいたことがあるんだから。あの人の書くことは時々大きくズレるんだから、鵜呑みにしちゃ駄目だろ。
で、去年から今年でGT500で一番の変化は何だったか、考えてみ?
─── 変化ねえ・・・何だろ?GT-Rの復活?
そう。もっと正確に言うと、GT500の三車種中、一車種だけが特認車両になった、ってことなんだよ。
─── ていうことは、今回の特別性能調整は、GT-Rを想定してるってこと?
俺はそうだと思うよ。ミノルタソも書いている通り、今年のGT-Rは09年から施行される新規定(*5)の「いいとこどり」で作られた特認車両なんだよね。
─── そこ、よくわかんないんだけど、どこが「いいとこどり」なの?
うん、そもそも09年規定そのものの詳細がまだきっちり発表されていないからアレだけど、09年の改訂の趣旨は、乱暴にまとめると
- コストダウン
- 安全性の向上
- ベース車両の寸法に起因する性能差の解消
の三つに絞られると思うんだ。
エンジン形式と排気量の統一、そして開発制限。空力性能も大きく抑制することで06年の性能以下にすることも明示されていたでしょ。これらによって1と2の両立を図ってるんだと思う。
そして、車体の基本サイズに関しては、暫定としながらも、きっちりした数値でオーバーハング、ホイールベース、全幅、全高が決められてたよね。
─── あ、なるほど。09年に抑制されるはずのエンジンと空力性能については現行規定のままで、車体サイズだけが09年規定を先取りしてる、ってこと?
そう。ただ、空力にせよエンジンにせよ、「抑制」の部分に関しては具体的な方法論が出てないから、発表されている09年規定に沿ったクルマを「今現在」作るとすれば、ミノルタソが言うところの「いいとこどり」にならざるを得ないじゃん。
─── それもそうだね・・・でもさ、ディメンションだけを09年仕様にしたのを特認にしちゃったら馬鹿っ速になることも判ってたんじゃ、車重をあげるとかすればよかったのに。
そこは疑問だよね。ことGT500になると、おそらく技術規定にしろ特認審査にしろ、三つのメーカーがみんな大きく関わっているだろうから、一車種、一メーカーだけが突出することは、現状では難しいと思ってたんだけど、そうでもなかったんだな。
─── で、そこを埋め合わせるための特別性能調整、と。
うん。いっそのこと、三車種に汎用のルールじゃなくて、去年の06Zに対する特認措置みたいに、GT-Rピンポイントのルールにしちゃえばよかったんだけどね。。。 「GT-Rが表彰台に2台載った場合は、全GT-Rに対してウェイトハンディを課すことを検討するものとする」とか。
─── ホンダとトヨタがGT-Rを舐めてかかってたのかなぁ?ディメンション上で多少有利になったところで、そんなに速いクルマを今のNISMOが作れる訳がないさね'`,、('∀`) '`,、・・・とか。
それで、合同テストとかが始まってみれば、結構速そうだったんで、慌ててGT-Rを抑制する方向の特別規則を付け足した、ってことかぁ・・・どうだろうねえ。
─── そういえば、mixiでね・・・ていうか、2ちゃんのGTスレに石浦のmixi日記が転載されててね、そこで結構おおっぴらに三味線のことが書いてあったよ。
へぇ、石浦ってmixiやってんだ・・・あ、このレスか。こりゃ色んな意味でまずいわなあ。。。とりあえず、2ちゃんのコピペだけ読むってのもあれだから、足跡はつけといたほうがいいんじゃね?
それにしても石浦・・・まぁ、まだ若いししょうがないかもしれないけどね、これはスマートじゃないよね。同じレギュレーションを逆手に取った三味線についてでも、寿一や武士が以前に書いた時は、もうちょっとスマートな書き方だったけど、これはね・・・。
─── NSX、やっぱ三味線弾いてたんだ・・・
そりゃそうでしょ。ミノルタソのコラム読んでもわかるじゃん。
─── あー、そういえばそうだねえ。「一般ファンはともかく、関係者はそんな真剣勝負みたいな盛り上がり方をしなくてもいいはずなのに」とか、「第一戦で1,2フィニッシュした途端に、今年のチャンピオンの権利を喪失することは確実なようなので、これで真剣勝負をしろっていう方が無理だろう」とか、「サーキットには、抜きつ抜かれつやラップタイムに一喜一憂することが何故か気恥かしいような雰囲気も漂っており」とか・・・
ホンダとしては、シーズンを獲るために第一・二戦で三味線弾くことにしたんだろうけど、それは自分から明言するこっちゃないと思うんだよね。ところが、それを、ミノルタソは言っちゃってる。
ホンダは、SUPER GTという場で「車体の開発」と「ワークスチームの運営」を童夢にアウトソーシングしている訳で、それを受けている童夢にとって、ホンダの意向は即ちクライアントの意向な訳じゃん。
で、こんなに内情をバラしてしまうことが、クライアントの意向に沿ったことだとは思えないんだよねえ。それを平然とやっちゃうってあたりが、まあ今に始まったこっちゃないけどさ。
─── いかにもミノルタソらしいっちゃらしいよねー。
中二病(*6)っぽいね。
俺は前から、林みのる・由良拓也・鈴木英紀の三人は日本レース界の三大中二病と思ってるんだけど。これに今回の石浦を加えて四大中二病にしてもいいかもね。
─── ミノルタソや鈴木タソはわかるけど、なんでゆらたくが?
あの人さ、以前ル・マン24時間レースの解説で「日本人は自動車レースが好きじゃないんですよね」とか言っちゃったり
─── あぁーあ、言っちゃった・・・みたいな。
あと、去年だったか、フォーミュラ・ニッポンでシーズン中に空力パーツの変更があったときにも、「フォーミュラニッポンは不思議なカテゴリーなんです。だって、マシンの差を無くそう、無くそうと努力して、みんな同じ速さで走るようにしながら、追い越せない、追い越せないと、悩んでいるんです。不思議ですね~。。。」とか言ってみたりね。
─── バージボード伸ばしてリアウイング減らした時?
そう。「ハードウェアの個体差を無くしてドライバーの技術勝負にする」ってのと「前を走る車の真後ろについてもある程度のダウンフォースを確保して追い抜きをし易くする」ってのは別問題だって素人の俺にも判るのに、敢えてそれを判らん振りしてJRPのやることに難癖つけるあたり、ガキっつうか中二病っぽいっつうかフルカウルっぽいっつうか。
─── フルカウルと一緒にされちゃゆらたくも気の毒でしょ、いくらなんでも。それに、その中二病患者たちのおかげで、今回の特別性能調整とか、そのための三味線とかがはっきり世の中に明示されたんだから。
そうだね。それに、「こいつら中二病」とか言って喜んでる俺も中二病だな。
─── 確かにね。
- (*1) B米
- 2ちゃんねるでのコテハンはB米◆EF3GbtfJdA。主にF3やアメリカ系のスレ、IRLの実況スレなどにいる。blogはこちら。
- (*2) 鈴木タソ
- 鈴木英紀のこと。
日本で唯一といってもいい、スポーツカーレース専門の雑誌(っつうかムック本)『Sports-Car Racing』の執筆者兼カメラマン兼編集者兼出版者。同書のタイトルを冠したサイトも主催。日本語でスポーツカーレースの情報を得られる貴重なサイト。ただし、情報の多くが「鈴木文体」とも言うべき独特の文体で記載されており、時として大変読みづらく、また、情報の偏り・憶測による決め付けなどもあるため、読む側にはそのあたりを見抜く能力も必要とされる。
また、自身の『Sports-Car Racing』だけでなく、童夢の公式サイト内でもいろいろな記事を書いている。したがって、この人の書くSUPER GT絡みの記事は、ホンダ寄り・童夢寄りのバイアスが強くかかっている、と見るべきである。
ところで『Sports-Car Racing』の最新号はいつ出るんだろう。つうか既に狼少年状態なんだよ!
- (*3) みんな大好きミノルタソ
- 言うまでもなく、童夢の代表取締役社長、林みのる。
その毒舌も最近はちょっと枯れてきたかと思ったら、忘れた頃にかましてくれる。
- (*4) おととしの特別性能調整
- 2006年に実施されたGT500の特別性能調整。ただでさえ複雑な調整要件に加え、その調整を逆手に取ろうとするチーム戦略も加わり、レース展開を大変判りづらいものにしたとして、評判が悪かった。
詳細はこちらのエントリに書いています。
- (*5) 09年からの新規定
- 詳しくはJAFのモータースポーツニュース、2007年8月10日発行分の13ページあたりを参照。
- (*6) 中二病
- ググレカス